3DO編(3DOジャパン/松下電器産業/三洋電機)

3DOというと松下(Panasonic)というイメージがありますが、3DO自体は
米3DO社が提唱したマルチメディア端末の規格のことです。、ゲーム機のようにライセンス
メーカーがハードを発売するのではなく、VHSのように複数メーカーから同じ規格で
ハードが発売されるというビジネスモデルです。マイクロソフトが提唱した規格で、国内でも
家電各社から発売されたホビーパソコン「MSX」に近いビジネスモデルです。
3DOの名前の由来は「オーディオ」「ビディオ(ビデオ)」続く3番目のメディア
「スリーディオ」を目指すというところから来ており、海外では読み方もそのまま
「スリーディオ」です。ご存知の通り国内ではなぜか「スリーディーオー」ですが。


日本では計3機種が発売された3DOですが、最初に発売されたのは1994年3月20日
に松下より発売された「3DO REAL(FZ−1)」です。
サターンよりも1万円高い定価54,800円で発売されたREALですが、フォトCD標準
対応、ビデオCD対応(オプション)、フロントローディングCDドライブ搭載でゲーム機と
いうよりAV機器というイメージのデザインです。なぜそのようなデザインにしたかというと、
3DO社はその名前の由来通り「全世界的なマルチメディアの統一規格」「ポストVHS」を
目指していたからです。旧来のゲーム機のようにふたが開いて取り出す形状だと、ビデオラック
の中には置いてもらえないですからね。各家庭に3DOが普及して、ビデオが見れて、音楽が
聴けて、ゲームが出来る。ハードも自社で独占するのではなくオープンな体制を取り、各家電
メーカーに作ってもらい普及させてもらう。そうすればCDやVHSのように3DO対応ソフト
がゲーム会社、音楽会社、映画会社から発売され、それらのライセンス料が3DO社に支払わ
れるというビジネスモデルです。ハード生産を他社にオープンにするという点を除けば、ソニー
マイクロソフトが目指している「ゲーム機として普及させ、将来的にはインターネットを利用
した家庭用マルチメディア端末を目指す」というビジネスモデルと非常に似ています。


ソフトライセンス料の仕組みが他のゲーム機と異なるのも3DOの特徴です。一般的なゲーム
機の場合は、ソフトが売れればハードメーカーにライセンス料が入るため、まずは普及させる
為に本体を赤字で販売するのが一般的です。ハードが普及すればよりソフトが売れてより多く
のライセンス料が入る。ソフトが売れればサードパーティもどんどんソフトを出し、ハードが
さらに売れ、さらに多くのライセンス料が入り・・という好循環になるからです。
3DOの場合はソフトがいくら売れても基本的にハードメーカーにはお金は入りません。ソフト
のライセンスは全て3DO社に入ります。普及させる目的もありライセンス料は1本3ドルと
格安でした。CD−ROMのプレス代に2ドルかかったとしても5ドル。1本500〜600円
で作れます。当時カセットだったとはいえ、任天堂スーパーファミコンのソフト製造委託料が
1本3000〜4000円だったことを考えると破格な値段です。今までは独自参入が出来なか
った下請け中小ソフトメーカーでも参入できる環境が形成されました。後にDの食卓、
エネミーゼロで有名になる飯野賢治氏もこれを機にWARPを設立、3DOに参入をしています。


さて、問題はハードメーカーです。実際には松下やサンヨーが、自力でソフトを流通できない
国内中小ソフトメーカーのソフト販売元になり、ソフトでもある程度の利益は得ていましたが、
基本的にはハードで黒字を出さないといけません。よって既に発表されていたライバル機である
サターン、プレイステーションと比べて高い価格設定になってしまい、その後の両ハードの
ハード値引き合戦に対抗することができませんでした。その後松下からフロントローディングを
排除した「3DOREAL2(FZ−10)」、サンヨーから「3DO TRY」がそれぞれ
44,800円で発売されましたが、サターンやプレイステーションのようなキラーゲーム
タイトルが無く、録画が出来ず画質もVHS程度のビデオCDもまったく普及しなかったこと
から、状況は変わらず両ハードのシェア争いを横目に自然消滅していく道を辿ることとなります。


3DOだけでこんなに長くなるとは・・・次回はサターンの話を予定しています。

参考文献 セガ VS. 任天堂 新市場で勝つのはどっちだ!?(国友隆一著/こう書房発行)